06/15
■ジャム
今日、数年ぶりに教会に行きました。
幼い頃に9年間ほど通っていた教会です。
この教会は幼稚園も経営しています。
もちろん、私もここの卒園生の一人です。
少し建物を改築したのか、礼拝堂には新しいペンキが塗られ、
穴の開いていたはずの壁は跡形もなくなっていました。
懐かしさと同時に、どこか寂しさを感じます。
でも、中はほとんど変わっていませんでした。
木のぬくもりがする、礼拝堂。
十字架から私たちを見下ろす、救世主。
牧師はまだ、この教会にいました。
少しだけ白髪が増えたけど、数年前と変わらない笑顔で私を迎えてくれました。
「久しぶり」
牧師は私のことを覚えていました。
すっかり忘れているだろうな、と思っていたのに。
私は牧師からジャムの瓶を二つ、もらいました。
この牧師はジャム作りが趣味でした。
黄金色のアプリコットジャムと、濃い赤のラズベリージャムです。
両方とも、綺麗に透き通っていました。
中に、浮いているものがあります。
「アミノ酸はね、ジャムをまろやかにしてくれるんだ」
尋ねると、牧師はそう答えました。
綺麗な色のジャムの中に、眼球が浮いています。
丸くて、濁っていない、新鮮な眼球でした。